株式会社エコ・トレード代表取締役　西村　隆宏 -社長のサムズアップライフ

西村　隆宏

株式会社エコ・トレード代表取締役

ヤマビル除けなどニッチ市場で
トップシェアをめざす急成長企業の
社長が明かす、人気商品の誕生秘話。

ヤマビルとの運命の出会い（？）が起業のきっかけ。

ヒル下がりのジョニー

10年前に会社を立ち上げるまでは、議員秘書やNPO法人の運営などをしていました。ビジネスで利益を追求することより、何か人の役に立つことに取り組みたかったんです。地元四日市の市議会選挙に立候補したこともあるんですよ。そんな頃、たまたまよく行く居酒屋で出会ったある企業の社長さんに誘われて、渓流釣りに出かけました。そこでヤマビルと運命的な出会いを果たしたわけです（笑）。とにかく気持ち悪くて「身の毛もよだつ」ってこういうことなんだなと。それで、これを除ける商品を作れば絶対に人の役に立てると思い、起業して開発・商品化をめざしたんです。当時、ヒル除けスプレーはすでに何種類か市場に出回っていましが、いずれも「ディート」という化学薬品を主成分としたものでした。例えば私が渓流釣りに出かけヒル除けを足もとに吹きかけて川に入れば、自然を汚すことにつながる恐れもある。釣りと自然を愛する者として、それは避けたかった。だから、化学薬品を使用せず生分解する材料だけで作るというこだわりを持ち、専門家と二人三脚で研究開発を続けました。そして計3年の月日をかけ、環境に配慮したヒル避けスプレー「ヒル下がりのジョニー」が完成したんです。

独自のネーミング戦略で知名度アップ。

「ヒル下がりのジョニー」って、変でしょ？（笑）ネーミングにはこだわったんですよ。中小企業がある程度のシェアを狙うには、何かしらの戦略が必要です。中でも商品のネーミングは大事な要素だと思います。研究開発中はとても苦しくてストレスも溜まりましたが、ネーミングを考えるのは唯一の楽しい時間でした。ほかにも「鉄腕アトムのアロマガードミスト」「タタミの用心棒椿三四郎」という商品もあるんですよ。当社のフェイスブックや私のブログでも「一度聞いたら忘れない」という好評価をいただくコメントや「どういうことやねん！」と突っ込んでくださるコメントなど、お客様からさまざまな反響をいただいています。ただ、最初は販路の開拓法もわからず、山登りに行く人を登山口で待ち構えて販売したりしていたほどです（笑）。でも、徐々にアウトドア専門店などにコネクションができ、おかげさまで「ヒル下がりのジョニー」は、現在ヒル除けでは全国トップシェアの商品に成長しました。

ビジネスは「計算」では動かせない。

鉄腕アトムのアロマガードミスト

私には、ビジネスの師であり恩人である方がいます。元電通専務で、ぴあ名誉顧問を務められていた入江雄三さんです。数々のビッグビジネスを成功させてきた伝説のビジネスマン。ある方の紹介でご挨拶させていただいたのをきっかけに、入江さんが定期的に開催なさっていた会のメンバーに加えていただきました。そこには毎回、政治・経済・文化など各界のそうそうたる方々がいらっしゃっていました。その末席に座らせていただくのは、いつも大緊張。でも、その空気を吸わせてもらったことは、今の仕事に大きく影響していると思います。どんなビジネス本も、あの空気感には勝らないんですよ。また、その会で手塚プロダクションとのご縁ができ、「鉄腕アトムのアロマガードミスト」の商品化にもつながりました。そんなこと、計算してできることじゃないでしょう？いろいろな創業者の話を聞くと「マネジメント」なんて言葉はまったく出てきません。結局、目的に向かって突き進むだけ。そして、人とのご縁が大事なんだと思います。

西村社長のサムズアップ：「念ずれば花開く」

創業者というのは、誰かに定めてもらったゴールなど持っていません。お客様から評価をいただくまで、自分がやっていることが正しいのかどうかもわからないんですよ。ただ、自分を信じてコツコツ活動することによって、お客様からいろいろな評価をいただいて、現実を捉えることができる。でもそこには、さまざまな問題もある。いろんなことを念じながら、それをひとつひとつクリアし続けていれば、いつか安心できる場所がある。ひたすら人の役に立つことを念頭にいいものを作り続ければ評価はついてくるということが、最近おぼろげながら理解できるようになりました。そんなことを象徴する言葉です。

子どもたちと一緒にヤマビルを研究。

会社の事業とは別に、「こどもヤマビル研究会」という自然教室を主催しています。私のヤマビル研究の師匠・東京大学大学院の山中先生の遺志を継ぎ、地元小学校の元校長先生のご指導のもと、小学校４年生から中学校１年生まで、5人の子供たちとヤマビルについていろいろ研究しています。解剖して臓器を確認したり、ヤマビルの生態を調べたり。もちろん、子どもたちも最初は気味悪がります。でもだんだん集中していくんです。子どもたちの研究で、ヤマビルの生態について新たに発見したこともあるんですよ。その過程を見るのが面白い。子どもたちの真剣さや素直な感性に、こちらも学ばせてもらっています。

リラックスタイムは、近所の温泉で。

私は完全なワーカホリック。会社にいる時が一番落ち着きます。リラックス法といえば温泉に入ることでしょうか。近所にかけ流しの温泉施設があるので、ちょっと時間が空くと出かけます。平日の昼間から、青い空を眺めながら何も考えずにお湯に浸かるのは贅沢ですよ。それで鋭気を養って、また事務所に戻って仕事をするんです。